取材レポ―ト【第3回山田昭記念講演会】COPLIセミナー「コミュニティがビジネスを変える。共創から始まるあらたな課題解決の形」

 

 不確実性が高まっている現在、戦略策定において「答えがない問いを、多様なメンバーで解決する方法」を多くの企業が模索しています。AIやIoTなどのバズワードに踊らされず、課題の本質を捉え解決策を考え出すことは、既存のビジネス事例をなぞっていてはできません。こうした課題に対する問題解決として、コミュニティによる課題解決が注目されています。
 トップダウンのアイデアを忠実に実行する組織ではなく、多様なメンバーが自分の頭で考え、アイデアを出し、実践を通じた学びを共有することができるコミュニティを通じた課題解決プロセスが、企業にとっても重要視される時代になりました。

 本セッションでは、従来の企業の枠に囚われずに活動しているメンバーで、未来の組織のあり方を考えます。

 

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講師は一般社団法人コード・フォー・ジャパン代表理事の関治之氏(右)

リベルタ学舎主宰で兵庫県広報官の湯川カナ氏(左)

 

それぞれの講演に続き「sli.do」で匿名の質問をリアルタイムでスクリーンへ投影し、おふたりにお答えいただきます。

 

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日 時 : 平成30年5月11日(金) 16:45~ 

場 所 :生田神社会館 3階 「梅の間」

 

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関 治之 氏
●プロフィール
一般社団法人コード・フォー・ジャパン代表理事。
「テクノロジーで、地域をより住みやすく」をモットーに、会社の枠を超えて様々なコミュニティで積極的に活動する。
住民参加型のテクノロジー活用「シビックテック」を日本で推進している他、オープンソースGISを使ったシステム開発企業、合同会社 Georepublic Japan CEO及び、企業のオープンイノベーションを支援する株式会社HackCampの代表取締役社長も務める。
また、神戸市のチーフ・イノベーション・オフィサー(非常勤)として、神戸市のスタートアップ支援政策やオープンデータ活用を推進している。
その他の役職:総務省 地域情報化アドバイザー、内閣官房 オープンデータ伝道師 等

 

 

コミュニティがビジネスを変える。共創から始まるあらたな課題解決の形

 

 COPLIは複数の会社が集まり、共にさまざまなことを考え、トライしていくコミュニティだと思っています。本日は「コミュニティがビジネスを変える。共創から始まるあらたな課題解決の形」と題して、ビジネスのなかでコミュニティの価値を見出していくにはどうしたらいいか、また、多様性や会社や組織以前にそもそもどういう社会であるべきかについて皆さまと一緒に模索していければ幸いです。

 

 共創やオープンイノベーションがなぜ重要視されているかというと、技術の進歩が目覚ましく、変動が激しい世の中だからでしょう。COPLIでもIOTやブロックチェーンやAIなどの最新技術について、セミナーを開催されているかもしれません。
 新しい技術が次々に生まれ、ビジネスも次の年には様変わりしてしまう、変動的で不確実な世の中になってきました。現在のビジネスを取り巻く環境はとにかく不透明で、複雑かつ曖昧です。このような現在の状況を「Volatility 変動性 Uncertainty 不確実性 Complexity 複雑性 Ambiguity 曖昧性」の略で「VUCA」といいます。

 また、インターネットによって世界と戦わなくてはいけなくなりました。

 

 上から言われたことをただひたすらやっていれば自動的に会社が成り立っていく時代は終わったのです。こういう未来を目指せばいい、こうすれば売り上げが増えるという明確な道筋はもうありません。

 

自己変容型組織が新しい価値を生む

 

 製品を開発し、発売するときに、これまでは企業のなかだけですべてが完結していました。しかし、社会課題が複雑化し、関係者も多様化した現在では、共創型開発をする企業が増えています。共創型開発では、行政や大学、NPO、消費者など、さまざまなプレイヤーが企業に集まり、共に企画を立ち上げ、プロトタイプを作り、製品化し、実際に発売して、そこからいかに早くプロダクトを出していくか、学んでいくかが大切です。

 共創が重要視されるこの時代、もはやトップダウンでは通用しません。

 

 これからは変化に適応できる組織作りと少ない人材をどう活かしていくかが重要になります。アクセンチュアの資料には「個人と会社の成長の同期化」「最適人材を必要時にどこからでも調達できる人材エコシステム」「既存事業のしがらみにとらわれない高速イノベーション創出」など、リーンスタートアップをとにかく早くまわす方法論がたくさん出てきます。

 

 フレデリック・ラルーの「ティール組織 ― マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現」は、新しい組織モデルについての本ですが、各地で読書会が開かれるほど話題になっています。ここで示される新しいビジネスモデルは、トップダウン式ではなく、アメーバ型の組織です。さまざまな人が会社の枠を使い、やりたいことをやるという組織形態が、世界で大きな成果をあげています。
 他にも「学習する組織」「なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか」「OKR」など、新しいビジネスモデルについて書かれた本が人気です。
 サイボウズの青野社長も「チームのことだけ考えた」という本を出しています。かれは多様性を重視し、これまでの働き方をガラッと変えました。副業解禁も推奨しています。
 すべてに共通しているのは個人と会社の成長を同期させる必要があると説いていることです。そうしないと複雑で曖昧な世の中では戦っていけません。

 

 知性の進化には三つの段階があります。一つ目が環境順応型知性。会社のルールに対して自分を合わせるチームプレイヤー。二つ目が実働型知性。自分の軸がちゃんとあり、軸に合わせていろんなものを取捨選択していけるリーダータイプ。そして三つ目が自己変容型知性。自分の意見をメタ認知し、フィルターを変えて複数の見方が出来る人です。


 自己変容型知性を持つ人は、自分のやりたいことを会社の目標として組み合わせていけます。このような知性の持ち主がたくさん集まれば、自己変容型の組織が生まれ、それは個人の意見を尊重しながら、新たな価値を生み出していくでしょう。

 

会社は成長のためのコミュニティであるべき

 

 あなたの会社は社員が社長にフラットな意見をいえますか?未来の組織の在り方は個人と会社の成長をいかに同期できるかにかかっています。
 会社は成長のためのコミュニティであるべきです。そうなれば離職率も下がり、自発的にアイデアやプロジェクト案が出て、他の企業とも連携がしやすくなります。
 「なぜ弱さを見せられる組織は強いのか」は、DDO=発達指向型組織についての本ですが、それを実践するアメリカの有名なヘッジファンドやエンターテインメント企業、IT企業はビジネスでも大成功を収めています。
 発達指向型組織が備える三つの条件は、Edge=成長のための領域、Home=自己開示できるホーム、Groove=学びを加速する慣習です。強みばかり見せるのではなく、弱みや苦手なことがいえ、安心安全な環境と成長のための領域があることが大切なのです。
発達指向型組織は、得意なものでも一旦手放させて次へ行かせ、成長を促します。人事制度等もすべてこの考え方に沿い、ハードな課題にチャレンジし、どういう方法でそれをクリアしたのかが重要です。いかに売り上げたかではなく、いかに成長したかが評価の軸になります。社員にとってもタフな環境ですが、乗り越えられると成長が実感でき、会社の売り上げも上がります。

 

 「ワークライフバランス」という言葉を聞いたことがあるでしょう。働き方改革等で最近よく使われる言葉です。しかし、そもそもライフとワークの関係はトレードオフではありません。組織が個人の成長に同期していれば、会社のなかで個人がどんどんステージアップしていき、ワークがライフワークに変わるはずなのです。
 副業をして、家族との時間も大切にして、いかに幸せに生きられるか、会社組織として、上手くバランスを取りながら働ける環境をいかに提供できるか、それがこれからの勝負になるでしょう。

 

依存から共創へ

 

 わたしが代表理事を務めるコード・フォー・ジャパンは「ともに考えともに作る」というテーマで活動する人たちのネットワークです。全国で81企画が活動していて、そのなかにはもちろんコードフォー神戸もあります。
 昨年、しあわせの村で行われた、コード・フォー・ジャパンサミットでは、50セッション700名の参加がありました。この規模になるまで4年かかりましたが、アンケートでは満足度96・8%という高い数字をたたき出す、素晴らしいイベントとなりました。

 

 コード・フォー・ジャパンは、市民と行政との関係を「依存から共創」へ変えたいと思っています。公共サービスに要望や不満があれば、これからは行政と市民が共創し、一緒に解決していくのです。
 市民もひとりのプレイヤーとしてアイデアを出し、データを活用し、プロトタイピングする、そんな地域コミュニティを作りたいという思いでこの団体をはじめました。
 やりたいことがあればチャレンジし、うまくいかなかったからあとで考えるというスタンスで、ハードな課題に挑んでいます。

 

 共創環境を学びたい人向けの地域フィールドラボは、自治体に企業を招いて研修を行い、三か月後に成果発表をするアクティブラーニング型の人材育成プログラムです。富士通や NEC など、さまざまな企業がさまざまな自治体に人材を派遣しています。
 ビジネスから一旦離れて社会課題について考え、異なる組織文化を経験してみませんか?ふだん会えないような人と会い、さまざまなプロトタイピングをして、作ったものをフィードバックしましょう。

 

 他にもハッカソンやアイデアソン、ワークショップを各地主催で行い、情報を収集し、データベース化し、ヴィジュアライゼーションし、それをもとに街の課題について話し合っています。行政向けには長期フェローシップや地域フィールドラボ、地域情報化アドバイザーなどのデータアカデミーも開催しています。

 

自己変容型の個人になり分散型の働き方をしよう

 

 大きな会社ほど急に変わるのは難しいものです。そこでわたしはまず「個人が変わりましょう」といっています。会社がつまらないのは自分がつまらないから、社会がつまらないのは自分がつまらないからです。会社を辞めなくてもプロジェクトは立ち上げられます。外の世界へ飛び出して、外部との接点を持ちましょう。

 

 わたしも総務省地域情報化アドバイザー、総務省地域IoT実装推進TF委員、 内閣府オープンデータ伝道師などを兼任し、分散型の働き方をしています。これからはわたしのような分散型の労働者が増えてくるでしょう。皆さんも数年後には複数のカテゴリーで働くようになるかもしれません。そのためには自己変容型の個人になる必要があります。また、会社はそういう価値観を持った人を、いかに活用できるかを考えなければなりません。

 

 日本には「生きがい」という概念があります。「生きがい」は得意なもの、好きなもの、世の中に必要とされているもの、対価を得られるもの、この四つの要素で成り立っています。これが組み合わさったとき、人は生き生きと働けるのです。
 生きがいを感じられる環境を会社が提供することで、生き生きと働く人が増え、新しいチャレンジ、そして新しいビジネスが生まれるのではないでしょうか。

関 治之

 

 

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湯川 カナ 氏
●プロフィール
早稲田大学法学部在学中にシリアルアントレプレナー・孫泰蔵氏の学生起業に参加、
Yahoo! JAPAN創設メンバーとして日本のインターネット黎明期に最先端で活動。
2年後、数億円のストックオプション権を放棄してスペインに移住。
10年間、コピーライター・糸井重里氏の「ほぼ日刊イトイ新聞」他でフリーライターとして活動する傍ら、現地の大学に通ってスペインを題材に「変化の時代を生き延びる力」ついて網羅的に探究。
出産と育児を経て、帰国。
2013年、神戸に、社会教育機関「生きる知恵と力を高めるリベルタ学舎」を設立。
社会参加や仕事づくりを目的とした学び・実践・協働を通じて、地方における人材活用・雇用創出の実験を続ける。
2016年マニフェスト大賞特別賞受賞。
『「他力資本主義」宣言』(徳間書店、2015年)他、4冊の著書・訳書がある。
2018年、兵庫県広報官。

 

 

自分の名前で仕事をする~これからの社会と働き方~

 

 人類には2回イノベーションがありました。炎を使うようになったときと、インターネットが生まれたときです。

 

 ネアンデルタール人だった頃のことを思い出してください。わたしたちは言語をまだ獲得していませんでした。そのため何人かでマンモス狩りに向かい、いざ捕獲となったとき、スムーズに意思疎通ができず、マンモスに踏み潰されたりしていました。   
 ネアンデルタール人は脳みそが大きく、そのせいで難産が多く、死に絶えたという説さえあります。しかし、トリビア的な知識を積み重ねることはできても、繋ぐことができなかったのです。

 

 クロマニヨン人になって人間は言語を獲得しました。脳は小さくなりましたが、異なる要素を抜き出し、知識を繋ぐことができたので、収納場所がコンパクトになったのです。人類はこうして流動する知性を手に入れました。
 ネットワークは現生人類の基礎であり、それを拡大したのがインターネットです。これにより脳に蓄積しなくてもいろいろな人の知識を臨機応変に使えるようになりました。人間の脳にシステムが近づいたのです。

 

 インターネット以前と以後で世の中は劇的に変わりました。炎と、そしてインターネットが人間の能力を解放したのです。

 

 1995年7月、司法試験に落ち就職浪人をしていたとき、孫泰蔵さんがヤフージャパンの立ち上げにわたしを誘ってくれました。創業メンバーになったのはそれがきっかけでした。ウィンドウズ95が発売されたのはその四か月後です。

 

 今も昔もわたしは技術についてはなにもわかりません。「システムインテグレーションの会社をやる」といわれたときも肝心の「システムインテグレーション」がわからず「なにそれ」と聞き返したくらいです。「パソコンの…」といわれ「わたしも使ってる!」と胸を張りましたが、それは文豪miniでした。

 

 しかし、100人いても全員が同じ考えなら一人と一緒。共創に大切なのは違うものであることです。わたしは出来ない人として出来る皆さんにとても期待しています。ネットワークを使い、外の力を自分のものにし、共に創るのがこれからの時代です。手を取り合って一緒にイノベーションを起こしましょう。

 

人はひとりでは生きられない

 

 流浪の人生のなかで何度もトライ&エラーを繰り返してきました。そんなわたしがいちばん誇れるのは失敗の数です。
 司法試験に失敗し、就職浪人中、ヤフーの創業メンバーになりますが2年で退職。ストックオプション最高値で全部売り切れていれば32億円が懐に入るはずが権利を放棄し、結果はゼロでした。直後スペインに渡り、10年暮らしたものの永住権を得た翌日に帰国。それから神戸に移住し、借金をして会社を興すも一年で経営破綻。離婚をしてシングルマザーになりました。
 そうして学んだのは、人はひとりでは生きられないということです。

 

 リベルタ学舎は110人のフリーランサーと契約しています。目標は変な人がご機嫌で働ける場所の提供です。みんなが自分の名前で仕事をすれば、共創するネタも膨大になります。
 リベルタ学舎のミッションは「すべての子どもが希望を持てる社会」を創ること。それには「すべての大人が今を幸せに生きている」社会ではなければなりません。子どもに夢を託す前に自分の夢を実現しようというのがリベルタ学舎の考えです。

 

 仕事の満足度を調査すると日本は世界で最下位。第一子を出産した後、女性の七割が仕事を辞めてしまいます。お父さんは仕事にやりがいを持てません。このような社会で子どもが未来に希望を持てるでしょうか。
 リベルタ学舎は皆がより幸せになる働き方を模索しています。

 

 並行して今年から兵庫県で広報官をしていますが、広報とは宣伝ではなくパブリックリレーションズ。人と人とを結ぶのがわたしの仕事です。

 

あなたがあなたらしく生き延びるためにそれぞれのなりわいをつくる

 

 「未来なりわいカンパニー」は、弱さをカバーし合い、強みを活かせる個人のための組織。さまざまな人材と企業を繋ぎ、多様な働き方と共創の場を提供するプロジェクトです。わたしはここで110人のフリーランサーと企業と共に、さまざまなイベントを企画・提案しています。

 

 従来の仕事や働き方は、家庭と両立し難く、一生続けづらいものでした。しかし、起業せずとも働きながら、主婦をしながら、社会に価値を作る方法はたくさんあります。
 働くことに対し、子どもが希望を持つために、わたしたちはどうしたらいいのでしょう。それには毎日の暮らしがより豊かになるような働き方を実現し、生き生きとした自分を見せることがまず大切ではないでしょうか。大人が幸せに働けない社会では、子どもも未来に希望を持てません。

 

 「未来なりわいカンパニー」は、組織の中でお金や人をプールするのではなく、さまざまな人材と企業がチームとなり、お互いの顔が見える信頼関係のなかで、社会に価値を生み出す具体的な「働き方」や「仕事」を共創しています。そうして自らが幸せな働き方を実践し、子どもたちに希望を持ってもらう、そんな持続的な地域社会を目指しています。

 

 リベルタ学舎は、2013年から、摩耶山の保全を目的とした「六甲摩耶活性化コンソーシアム」に参加し、親子登山や薪割り活動をしてきました。そこで一緒に森林保全活動に取り組んできたのが白鶴酒造酒式会社さん。「いいお酒造りには、いい水が必要。いい水には、いい山が必要」ということで、この活動に参加されたそうです。

 

 そんなご縁があり、白鶴酒造と協働で地域の食べる力を高める「白鶴御影校」という企画をスタートしました。それからほぼ毎月UCCコーヒーやQBBチーズ、カネテツとのコラボで“毎日の食卓の新しい楽しみ方”を提案するイベントや、食の専門家と“毎日の食の基本”を伝える講座などを開催。これまでのべ100名以上がスタッフとして参加。理念の実現を通じて、地域の食文化・生活文化へ貢献しようとしています。

 

生き生き働くという社会貢献

 

 今の40代が95歳まで生きる確率は50%近くになるだろうといわれています。平均寿命は一日5時間ずつ伸びているといわれ、20代の半数は100歳まで生きる可能性があります。ガンになっても次々に新薬が出て、人間はなかなか死ねなくなりました。しかし、行政もお金がないので市民の老後を保証できません。定年後に遊んで暮らせるような世の中ではないと思った方がよさそうです。
 一方、企業の平均寿命は23~4年。そのうえAIが240万人の雇用を奪うといわれています。ですから一生を通じて出来るやりがいのある仕事を作り、社会に価値を生み出しましょう。わたしたちは生きるために稼がなければならないのです。

 

 昔は資本がなければなにも作ることができませんでした。でも今は3Dプリンタに代表されるようにモノを再生産するのは簡単です。だからこそアイデアが価値を持ちます。それぞれが好きな絵を描き、マーケットが評価するクオリティまで高めていく、それがこれからの「なりわい」の作り方になるでしょう。未来を生き抜くには、あなたにしかできないことやるしかありません。

 

 そうして皆が楽しそうに仕事をしていれば、大人になるっていいな、こんな大人になりたいな、と子どもたちが思ってくれるのではないでしょうか。生き生き働くということはそれだけで社会貢献なのです。

湯川 カナ

 

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「sli.do」に投稿された質問と回答

 

「コミュニティに参加する社員を企業はどうやってサポートしていけばいいか」

 

 グーグルなどは社員のコミュニティ参加に対する手厚い制度があります。しかし、どの会社もグーグルほど余裕があるわけではありません。一般の企業が社員をサポートする場合はどうしたらいいか。それはまず「許す」ということです。「行ってらっしゃい」と快く送り出してください。参加する側もいちいち会社に許可を取らず、自立する個人として参加すればいいと思います。
 ちなみにわたしは昔、副業禁止の会社で働いていました。しかし、会社を立ち上げたくて社長に直談判し、許可を貰いました。副業禁止のルールは単なるテンプレート。会社のルールなんて結構そんなものです。

 

湯川 まず社員への信頼が大切です。どんどん参加させて、得たものを会社で活かし、仕事の質を上げて貰いましょう。
 リベルタ学舎はフリーランスと一回一回契約をし、お互いのヴィジョンを実現させるために力を貸し合う対話型の経営をしています。
 有能な社員を違約金で縛ってもモチベーションが下がるだけです。この組織にいるからより人生の目標に近づけるというような、プラスのモチベーションを感じる職場環境があれば、コミュニティで得たものを会社に持ち帰ってくれるはずです。

 

 コミュニティ参加を推奨する会社に共通するのは離職率の低さです。ボランティアやコミュニティ活動をしている人はたいへん生産性が高いというデータもあります。
 これからますます人材難になり、企業はもはや選ばれる立場です。社員を縛り付ける企業は淘汰されていくでしょう。経営者もそれを理解しなければなりません。

 

 

「人には勝手に成長する人、動機づけがあれば成長する人、成長を望んでいない人、成長を拒む人がいると思います。

3、4番目の人には成長しろといっても無理なのでは」

 

湯川 それはどの物差しで見るかによります。会社が望む成長をその人は求めていないのかもしれません。その人が成熟した結果、成長を望まないならそれでいいのではないでしょうか。
 組織の良さは適材適所を用意できるところにあります。それぞれの個人に合うポジションを会社が用意すればいいだけです。成長する人が欲しいならそういう人が行きたいと思う環境、企業を作ることだと思います。

 

 成長の仕方もいろいろあります。成長していないというのは一面的な見方で、方向性や人生の優先順位が違うだけかもしれません。
 うちは完全リモートワークで働き方は自由ですが、一か月のうち一週間しか働けない発達障害の人もいます。しかし、会社の状況、クライアント、欲しい技術を伝え、あなたの能力はそこに活かせるかもしれない、だから会社としてこれだけ給料を払います、失敗しても給料は下げたりしませんといって、好きなことをしてもらうと、その一週間でものすごいパフォーマンスを発揮するのです。変なプレッシャーを与えると逆にパフォーマンスが下がるので、とにかくやりたいことをやってもらいます。
 大事なのは会社と個人の成長をいかに組み合わせられるかです。

 

 

「仲の良い人たちがわいわいしているコミュニティは敷居が高い」

 

 確かにそういうコミュニティはあります。そのなかでだけ通じる言葉が出来ていたりして入りづらいですよね。多様性といいながらなかなか女性が入ってこないのは男性だけで組織が出来上がっているからです。そこはサブリーダーを女性するなどして解決するといいのではないでしょうか。多様性を担保するためのルールや初心者が入って来やすい雰囲気づくりが必要です。
 コード・フォー・ジャパンも何度かメンバーチェンジしています。目的をちゃんと意識した組織ならステージによって変わっていくものです。

 

湯川 リベルタ学舎は出入り自由です。組織を維持しようと思うとどうしても内向きになり、初心者が入りづらい雰囲気になってしまいますが、目的が明確なら風通しもよくなり、共鳴した人が入りやすいのではないでしょうか。

 

 

「コミュニティをまとめるにはどんなリーダーが必要か」

 

湯川 TEDxKobeでも「弱みを軸にする強固なチーム作り」と題してお話しさせていただきましたが、基本的に中心になる人はいちばん弱者であるべきだと思っています。強い人がリーダーだと周りを手足にして硬直的な組織を作ってしまうからです。
 わたしはたくさん失敗しているし、なにもできないので周りに優秀な人が集まってきてくれます。自分より優秀な人と組まないと組織も面白くありません。

 

 わたしは持論があって、リーダーとして適任なのは「よく笑う人」笑顔の人ってやっぱり一緒にいて気持ちがいいじゃないですか。辛いことがあっても明るく笑い飛ばし、他人のいいところに光を当てられて、なにかやりたいことがあればフックアップできる人。元気がない人がいれば声をかけ、空気が悪いと思ったら失敗談を披露するなどして場を和ませることができる人です。

 

湯川 松下幸之助が経営者の三つの条件として「愛嬌がある」「後ろ姿に余韻がある」「運がよさそうに見える」というのをあげていました。愛嬌があると人が寄ってくるし、後ろ姿に余韻があると前に回り込んで話してみたくなる、運がよさそうだと話しに乗ってみようかなと思う。これは周りの人が主体的動く要素ではないかと思います。

 

 

「AIなど さまざまなテクノロジーが生まれましたが、変化についていけない人はどうしたらいいでしょうか」

 

湯川 変化についていけないコミュニティを作るのはどうでしょう。連絡したいときはのろしをあげるとか…。

 

 無理に変化についていかなくてもいいと思います。とはいえ自然と学べる環境が理想ですね。テクノロジーが発達していけば、難しさは見えなくなります。もっと洗練された音声インターフェイスができれば、自然とテクノロジーを使えるようになるのではないでしょうか。現在はまだテクノロジー側がキャッチアップできていないのでしょう。

 

湯川 母は70歳でラインを使い始めました。ゲートボールの連絡がラインになったり、孫と会話できるようになると、お年寄りの間でも一気に普及するんですよ。逆にいうと、成員に必要がないテクノロジーにはついていく必要がないのではないかと思います。

 

 

「コミュニティで本当に稼げるのか」

 

 成功している企業の多くはコミュニティ参加を推奨しています。そういう企業は離職率も低いです。また、外のコミュニティに参加することで生まれた新しいアイデア、プロジェクトをさまざまなところで見てきました。それをしっかりと後押しする体制が必要です。

 

湯川 会社もコミュニティなので、要は稼げる事業を作れるかどうかなんですよ。「人間のいちばんダメなところは自分が座っていてビジネスプランができるという勘違い」「やってみないとわからないじゃないか」とライフネット生命創業者で、現在APU立命館アジア太平洋大学学長の出口治明さんもいっていました。
 コミュニティに参加すれば反応を見ながらビジネスプランを立てられます。コミュニティであれ事業であれ、まずやってみることが大切です。

 

 

「COPLIへ若い社員の参加を促すにはどうしたらいいですか」

 

湯川 本を読んでもらういちばんの方法は禁書です。ですからCOPLI参加絶対禁止にしたらいいのではないでしょうか。
 冗談はさておき、まず今参加している皆さんが楽しむことです。楽しそうにしていれば自然と若い人も集まってきます。

 

 ビジネスプランを立て予算を出す。それを制度化すればとっつきやすいです。あとは年齢制限をして強制的に若返りをさせるとか、理事から総取り替えしてしまう。それくらいしないと駄目でしょうね。
 無理ならアンダー35で組織を作り、一年間は好きにさせ、失敗してもいいのでとにかくやらせてみる。若手社員を参加させ、どれだけ失敗させたか。そこからどういう気付きを得たのか。学ばせたのか。それを上の世代の評価軸にすれば変わると思います。

 

 

「地域に根差したコミュニティを運営していくにあたり外へどう発信していけばいいのでしょうか」

 

 地域でコミュニティを作るのは確かに大変です。しかし、神戸でやるからといって集めるメンバーを限定する必要はありません。面白そうなネタがあれば世界中から人が集まってきます。
 新しい価値を生みたいときには、こんなに面白いものがあって、それがどんな社会的価値があるのかというのをちゃんと発信するといいですね。それなら神戸行かなきゃと思って貰えるものを発信していくのがポイントです。
 人は正しさのためではなく楽しさのために動きます。そこにフォーカスして後はとにかくトライ&エラーを続けていくしかありません。

 

湯川 「半日村」という童話があります。これは山の半分しか日が差さない貧しい村のお話しです。そこで暮らす一平くんはある日両親の会話を耳にします。「山があるから悪いのだ。でもそれはどうしようもない話でありあきらめるしかない」それを聞いた一平くんは、次の日から山を削り、土を池に捨てるという作業をはじめました。一平くんがとても楽しそうにそれをやるので、最初は子どもたちが、やがては大人たちも一緒になって山を削り、池を埋めるようになります。そして最終的に山は半分になり、村に一日中日が差すようになるのです。そしてその日から村は一日村と呼ばれるようになりました。


 このように、楽しさがドライブして多くの人を巻き込めば、人生も生活も変えることができます。無理はせず成員のすべてがハッピーであることを目指しましょう。
 理念を実現する組織はすでにその理念を体現する組織でないといけません。共有できる目的を持ち、一歩ずつ踏み出していけるように、丁寧なコミュニケーションを続けていくしかないと思います。忍耐を笑顔で楽しみ、皆でトライ&エラーを続けていきましょう。

関治之 湯川カナ