取材レポ―ト【COPLI特別セミナー】「IoT・AI時代のビジネス潮流にどう対応すべきか? ~神戸内外の先進企業に学ぶ」

講演03_風景

COPLI交流・視察委員会では、このたび関西経済同友会、中堅企業委員会との共催で、

神戸市内の先進企業から4名の講師をお招きし、特別セミナーを開催しました。  
IoTやAIをはじめとした最新技術や、それらを活用した新しいビジネスの潮流に対し、我々はどのように対応していけばいいのでしょうか。

また、具体的な導入の道筋はどのようなものになるのでしょうか。


神戸デジタル・ラボの舟橋健雄氏、MOMOの大津真人氏、みなと観光バスの松本浩之氏、そしてSTORIA法律事務所の柿沼太一氏からお話を伺いました。

 

 

日時: 2017年10月4日(水)14:00~17:10 
会場: 神戸デジタル・ラボ10Fセミナールーム

 

① 「IoTやAIをどうビジネスに活用するか~KDLの取り組みから」

 講師:舟橋 健雄 氏(神戸デジタル・ラボ 広報室長)

fhoto_KDL

 

「IoTやAIをどうビジネスに活用するか~KDLの取り組みから」


 最近、さまざまな場所で聞かれるようになった「IoT」と「AI」という言葉。このふたつの最新技術と、我々はどう向き合っていけばいいのでしょうか。今日はそれを皆さんと一緒に考えていきたいと思います。そして、この講演がなにかひとつでも未来へのヒントになれば幸いです。

 

 KDLはウェブ系のシステム開発企業で、阪神・淡路大震災が起きた1995年の10月に創業し、今年で創立22年になりました。
 収益モデルとしても顧客価値としてもシステム開発ビジネスだけではなかなか明るい未来が描きにくくなってきた昨今、独自のサービスを数多く生み出し、新たなビジネス可能性を模索しています。中でも情報セキュリティサービスについては西日本でも随一の立ち位置を築いており、最近では兵庫県警のサイバー犯罪対策課とタイアップし、情報セキュリティに関しての情報交換・技術交流を進めるなどしています。
 本日は、弊社が目下取り組んでいる独自サービスの中からIoTやAIに関するものをご紹介したいと思います。

 

 マッキンゼーは2013年、「2015年~2030年に世界を変える12の破壊的な技術」についてのレポートを発表しました。その破壊的技術の中のトップ2とトップ3が、「IoT」と、「AI」でした。そして2017年の今日、実際そのレポート通りの形になりつつあると感じています。
 では、そもそも「IoT」そして「AI」とはなんなのでしょうか。
 「IoT」はInternet of Thingsの略。「モノのインターネット」という意味です。ウィキペディアから引用しますが「様々なモノがインターネットに接続され(単に繋がるだけではなく、モノがインターネットのように繋がる)、情報交換することにより相互に制御する仕組み」のことをいいます。また、それによって実現する社会自体もIoTといってよいでしょう。

 

 インターネットは軍事利用から始まりました。そのあとパソコンが普及してインターネットを媒介に世界中でいろいろな情報が見られるようになりました。そして、今はパソコンだけでなく、さまざまな機械や家電、消費財あるいはスマートフォンがインターネットで繋がっています。IoTはそんな今日のビジネス環境を表す言葉ともいえるでしょう。
 その環境でなにをするのか、今それが問われています。さまざまな物が繋がり、お互いに情報をやり取りしているなかで、企業や個人がどう動くかが重要です。

 

 IoTはセンサー、クラウド、アプリケーション、この3つのレイヤーから成り立っています。そしてセンサーで検知されたデータがその間を行き来しています。IoT関連ビジネスとは、この3+1のいずれかのレイヤーに大別することが可能です。KDLではこの4つのなかの「クラウド」レイヤーに特化して事業を展開しています。
 そしてAIとは、Artificial Intelligence。つまり人工知能です。人工知能もインターネットへの接続により実現した技術という意味では、AIもIoTの一部ともいえます。
 これもウィキペディアから引用しますが、AIとは「人工的にコンピューター上などで人間と同様の知能を実現させようという試み、あるいはそのための一連の基礎技術を指し」ます。
 言うなればAIとは「人間のノウハウをコンピューターへ移行するテクノロジー」と考えてよいでしょう。碁等でプロをAIが打ち負かす現象が起きていますが、さまざまなノウハウをコンピューターに代替させればより効率がよくなります。

 

 弊社はソフトウェアを専門にしている会社です。自分たちで一からセンサーやハードウェアを作ることはできません。ただ、今はセンサーの部品が廉価で市場に出回っており、そういう汎用品を組み合わせてハードウェアのプロトタイプを作ることができるようになりました。また、そのハードウェアも、以前はメーカー企業しか制御できなかったのですが、今や我々のようなソフトウェア開発者でも制御できる時代が来ています。
 

 KDLでは去年の4月からIoT専門部署を作り、IoTビジネスに本格的に取り組みはじめました。ソフトウェア開発企業でも、ハードウェアと関係を持ちながらできることがあるという思いがきっかけでした。また、これらのIoT機器にはセキュリティ上の問題点が未解決のまま存在しているので、弊社セキュリティ事業部のホワイトハッカーたちがこれらの問題点を見つけ、データの盗用や漏洩を防止し、よりセキュアな環境で通信できるよう協力させてもらっています。

 IoTビジネスの具体的な取り組みとしては、まず、弊社のトイレから実験をはじめました。トイレにドアの開閉を検知するセンサーをつけて手元のアプリでどの個室が空室かリアルタイムに分かる仕組みを作ったのです。これが意外とおもしろいと好評で、日経新聞などにも大きく取り上げていただきました。
 また、ユネスコデザイン都市事業の神戸市代表として、この開閉検知の仕組みのもととなる「Cloud Switch API」をフランスに出展いただきました。
 それから実用化はまだ先ですが、旭化成エレクトロニクスと共同で「IoT見守りソリューション」のクラウド部分も開発協力させてもらっています。これはドアの開閉を一元的に管理し、スマホでも見られるような仕組みです。すべてのドア、また机の上にあるべきものがあるかないかなど、オンオフで検知できるものであれば何にでも応用できます。

 

 IoT分野におけるKDLのモットーは、①クラウドに特化しつつ、②データの取り扱いはセキュアに行い、③「ラピッド・プロトタイピング」つまり「思いついたらすぐ形に」することです。このラピッド・プロトタイピングの事例もご紹介しましょう。

 

 アフリカの国ルワンダは今、ITで国を立て直そうとしています。神戸市はルワンダと提携しており、その経済ミッションに弊社も昨年参加しました。そこでいろいろな発見がありました。
 ルワンダはとても雷の多い国で、毎年たくさんの人が雷で命を落とします。それをなんとか防げないかということで、帰国後、雷観測リストバンドを作りました。基盤むき出しのプロトタイプではありますが、各方面から好評をいただき、今年設計図を公開し、オープンソース化しました。
 まだ商品化には至っていませんが、12キロ先の雷まで検知できるということで、日本でもゴルフのときなどに活用できるのではないかと思います。

 

 それ以外のIoTビジネスの事例をご紹介しましょう。
 スマホのナビは歩きながらだと使いづらいため、スマートグラス用の翻訳アプリをリリースしました。日本語で喋ると他の国の言葉に翻訳してくれるサービスです。これは先日「ちちんぷいぷい」でも紹介されました。
 それからエイプリルフール限定企画として、ウェブサイト上で「社長ダッシュボタン」を公開しました。これは「アマゾンダッシュボタン」にヒントを受けたもので、お客様にこのボタンを配布し、それが押されると社長室のパトランプが鳴って、社長がダッシュで駆けつけるというものです。
 ちょっとした冗談でしたが、これはひじょうにウケました。たとえば飲食店にタブレットを置き、対応がまずい場合にボタンを押すと、奥にいる店長が出てくるなど、いろいろ応用がきくからです。データが蓄積されれば飲食店等のサービス向上に役立てるのではないでしょうか。ということで、7月に実店舗での実証実験をはじめました。

 

 AIの分野においては、独自の先端技術を磨きつつ、AIベンチャー等と協業し、眼の前のビジネスを作っていくというのがモットーです。具体的には、京都大学の新熊亮一准教授と共に、「関係性技術」を開発しています。
 「関係性技術」とはモノとモノ、人と人、人とモノ等の潜在的なつながりを定量化して、未来の価値を予測する技術です。ビッグデータという言葉がよく聞かれるようになりましたが、関係性技術では、それほどビッグでないデータからでも未来予測が出来る点が特徴です。この技術を用いて観光マーケティング分析等、さまざまなトライアルを現在進めています。
 関係性技術を使った観光マーケティング分析は、長野県白馬村にて実証実験を行いました。独自開発の人物移動予測エンジンを用い、観光シーズンの2カ月間に訪問客のスマートフォンアプリやSNSの投稿から位置情報を得て動向を分析、考察したのです。たとえばtwitterの位置情報付き投稿に限定して集めれば、どこでどんな人が動いているかがわかります。そして、そういうものを収集していくと、未来が予想できるのです。お客様からは「今までわからなかった観光客の動態が可視化できた」と好評でした。

 

 さて、昨日から千葉の幕張でCEATECが始まりました。これまでは家電の発表のような場所だったCEATECですが、今年はIoTの方へ舵を切ってきています。
 弊社も先述した観光マーケティング分析で出展をしました。また、旭化成エレクトロニクスのブースで「Cloud Switch API」、神戸市のIoT推進ラボのブースで雷観測リストバンド等、計4ヶ所でブースを出展しています。そこでしているのはほぼIoTとAIの話しです。
 もうひとつはユーザーが質問すると、膨大な衣服データを学習した人工知能が、好み合ったファッションを勧めてくれる「Fashion Recommend Bot」
 これは対話システム分野での最先端技術を提供するAIベンチャー「Nextremer」との協業で開発しました。AI×ChatBot活用による新しい顧客体験の提供です。 Nextremerは東京都板橋区、高知、インドに拠点がある会社で、ラインやチャットの会話をAIに対応させる技術を作り、実際に高知銀行等でも使われています。

 

 こうしたさまざまな事例は、「とにかくやってみる」という姿勢の中で生まれたものばかりです。やってみる中で思いもしなかったような発見があり、面白い展開が生まれます。アイデアを形にするための技術と考えれば、IoTもAIもそんなに難しいもの、縁遠いものではないはずです。皆さんもぜひこれらの技術をビジネスに活用するためのアイデアを考えてみていただければと思います。

舟橋健雄

 

 

 

② 「神戸のハードウェアスタートアップが目指すIoTの未来」
 講師:大津 真人 氏(株式会社MOMO 代表取締役)

fhoto_Momo

 

「神戸のハードウェアスタートアップが目指すIoTの未来」

 弊社Momoはハードとソフト、両面を開発する会社ですが、ハードウェアのベンチャーは神戸に一社しかありません。また、大阪を含めても数社だけです。
 IoT・AIの時代といわれながら、ハードウェアのベンチャーがなぜほとんどないのか、今日は主にその話をさせていただきます。

 

 大学院時代、わたしは認知心理学、認知科学を専攻していました。脳はどんなふうに動いているのか、画像を認識して行動する、記憶するとはどういうことなのか等の研究です。10年くらい前の話しですが、当時はAIがそれほど流行っていませんでした。
 大学院を辞めてからは、自営業をしたり、個人でアプリを開発したり、システムエンジニアとして大手企業のアプリケーションやシステム開発に携わっていました。
 なぜAIそして認知科学から足を洗ったのかというと、小さな力で大きなものを動かしたい場合、AIでは困難ですし、お金にするのもひじょうに難しい分野だったからです。

 

 2010年頃、個人でアプリを開発し、それが40万ダウンロードされ、ヒットを飛ばした経験から、AIの研究をするよりもアプリを作ってプラットホームに乗せる方が効率的だと学びました。そして、2016年3月にMomoを立ち上げ、ハードウェアの開発をはじめたのです。ソフトウェアはレッドオーシャンで、アプリケーションは無数にあり、なにか出してもそれだけでは世の中は動かせません。そのため、ハードウェアとソフトウェアを連携させる方向へ進もうと考えました。
 今日はそんな中で見た、ハードウェアベンチャーの実情をお話しします。

 

 2016年6月、神戸市によるベンチャー支援プログラムであるKOBE GLOBAL STARTUP GATEWAY第2期に採択され、その中で株式会社Momoは法人化する運びとなりました。そして、10月には兵庫県クリエイティブ企業コンテスト第1期、大阪市シードアクセラレーションプログラム第2期にも採択されました。 神戸市や大阪市はベンチャー支援の取り組みをしており、弊社はその中でご指導いただいたこともあって、いわゆるベンチャー式経営を行っています。資金調達も、エンジェル投資や資本制ローンやVCによる投資で、設立から今までで、合計9700万円ほど調達しました。

 

 普通のITベンチャーを立ち上げるときは、3~4人ではじめて1000万~2000万円ほど調達できれば、アプリケーションやソフトウェアなら最低限のものが作れます。多少はお金も入ってくるし、その有効性を検証できることが多いです。しかし、ハードウェアだと1年くらいかけても完成に至らないこともあります。回路の設計や基板レイアウトをして、書き込むソフトウェアを作り、クラウドと繋ぎ、アプリケーションを完成させるには、とても時間がかかるのです。

 

 弊社が開発したスマホ使用時のコントロール機能OTOMOSは、子どものスマートフォンを親が柔軟に制御できるシステムです。使用時間制限や歩きスマホの防止、事故時の自動通知機能を備えています。運転者向けのソリューションで、運転中スマホを使えないようにするシステムも開発が終わりました。
 部品は中国の深圳で調達しています。日本の工場で頼むと1枚5000円のところ、深圳なら1000円ほどだったりするからです。
 しかし、実際に頼んでみると、上がってきた基板に違う部品が使われていたりするので、エンジニアを連れ、通訳を雇い、直接出向かなければなりません。郊外にある工場の近くで2~3泊し、このチップは図面と違う、ここに電源が通っていない、チップが動いてないなどなど、色々話して修正してもらう必要があります。
 今は試作用のキットが増えたので、試作の段階では市販の開発ボードを使い、ぎりぎり動くものは作れます。しかし、一日中動くもの、量産して人に売れるものを作るとなれば話が変わります。試作やデモ機を作ることは出来ても、そのまま売ることはできません。

 

 これまで世の中になかったためか日頃の行いが良かったためか(笑)、弊社のOTOMOSは新聞でも30~40紙に取り上げていただきました。また、損保やロジスティックス分野の大手企業からも好評を得て、量産前まで来ました。しかし、実際の供給にはまだ至っていません。
 お客様に欲しいといわれても、無線の認証などが必要で、量産はそのあとになり「2~3ヶ月待ってください」といわざるをえないからです。
 
 通常のITベンチャーは「ラピッド・プロトタイピング」「リーンスタートアップ」といった、カスタマー向けに試作をし、どういう機能なら使いたいか、お金を払うか等、市場性を探る手法を取ります。
 しかし、たとえば弊社のサービスの場合、むき出しの基板を一日中つけてもらうことは出来ません。ですから顧客がストレスなく使えるケースを作る必要があります。そうしなければ本当の調査ができないからです。そのためにはまず3Dモデリングが出来る人材を確保し、3Dプリンタで試作用のケースを作成する必要があります。しかし、そのあとの量産を考えると、射出成型と齟齬がないかも問題で、それを成功させるには設計会社と契約しなければなりません。そうして作った基板とケースは、小型化、薄型化するために試験を繰り返し、何度も設計しなおしていきます。
 量産向けのハードを作るのにいちばん大変なのがハードウェアで、最低限必要なもののハードルが高いのです。

 

 ここからはもう少し一般論になりますが、例えば、IoTは成長市場で、2017年現在、6兆円の規模があり、2021年にはそれが11兆円になるだろうと予想されています。この伸びは他の技術分野に比べて実はかなり緩やかです。世界を変える技術の1位がモバイル、次がIoT、次がAIといわれている中、IoTの年平均成長率は17%しかありません。

 

 IoTはこれからどんな成長の仕方をしていくのでしょうか。
 2020年、IoTの支出の80%はB2Bのアプリおよびユースケースに費やされ、基本的にはビジネス向けになるといわれています。家電やホワイトボード、ドアやロボットがIoT化されると捉えられていますが、実際は製造業や輸送業、運輸業、海運業、公共事業で問題を解決する裏方として動くものです。ガートナーの調査では、それが最も大きな市場になっています。
 2020年までに公共事業で管理される接続デバイスの総数は10億。今後IoTで伸びるのは、消費者の目や手に触れるものではない、ということがここから見えてきます。

 

 さて、事業費用の内訳を見てみると、最も大きいのはデバイスにかかる費用です。
 デバイスとソフトウェア開発で3分の1以上占めてしまうような現状では、初期コストが非常に嵩みます。

 

 IoTで「誰でもいろいろなことがわかる世界になる」。確かに言うのは簡単ですが、やるのは思った以上に難しいようです。

 

 たとえば先日お聞きしたKDLの雷観測リストバンドは、回路の設計がいらないウェイクアップボードや開発ボードを使って作られているそうです。市販化するには回路設計、基盤のレイアウトをし直さなければなりません。電流が大きいと磁界が生じるので、部品同士が干渉し合わないよう、チップの置き方も適切にしなくてはなりません。電池の管理を間違えば炎上しますし、そこはさすがに専門家でないとできません。
また、量産化したければ組み込みのプログラミング、射出成型の技術は必須です。アンテナの部分を自作するとコストは下がりますが、技適(無線の許認可)も必要でしょう。
 ちなみに金型は切削加工するので、日本でやると400~600万かかりますが、深圳なら100万で出来ます。しかし、金型をすべてスクラップ業者に売られたりといった話もよく聞きますし、工場の調査や選定も慎重にしなければなりません。
 わりと簡単なものを作ろうとしても、これだけの不確定性があり、スキルもコストも必要になります。企画が鋭くてもこうした開発が全部出来る人はほぼいませんから、ハードが関わってくるIoTのサービスの伸びが非常に緩やかなのだと思われます。

 

 よくいうIoTプラットホームとは、各種センサーデバイスからデータをクラウドに飛ばして集約し可視化するものです。その他にIoTの基板に入れるOSもありますが、こちらはandroidに近いものをイメージするといいでしょう。IBMもアマゾンもその他の会社も、IoTのプラットホームを出していますが、センサーからデータを飛ばすところはなかなかいいソリューションが出て来ていません。

 

 わたしたちが作ってきたのは、スマートフォンのケースに入った基板と連動するソフトウェアによるスマートフォンの制御ソリューション、OTOMOSでしたが、その基板を流用して作るIoT開発プラットフォームを12月にリリースすることになっています。
 ちょっとしたサービスを作る場合に、基板設計、筐体設計、基板・筐体量産、技適等が全て不要になるようなものをやろうとしています。

 

 15年前はウェブで情報を発信するときにはHTMLでコーディングしてホームページを作ったりしていました。でも今は各種ブログやフェイスブックがありますから、そんなことをしている一般の人はあまりいません。

 

 わたしたちが次にリリースするものもプログラミングが必要ないIoT開発プラットフォームで、IoTにおけるアメブロみたいなものを作りたいと考えています。

 

 たとえばこのプラットホームでは、街灯の電球が切れたとき、土木局へ連絡がいくというようなシステムを、ドラッグ&ドロップ(とセンサーの購入、設置)だけで作れます。  明るさのセンサーをドラッグし、閾値を設定し、ちらつきや照度がひじょうに低い状態が続けば通知されるシステムを簡単に作れる、というものです。

 

 これはたとえば公共、運輸、土木、建設、警備、介護、農業、色々な現場での問題解決に役に立つものと信じています。
大変な現場ほど切実なニーズに肉薄することができるので、可能性があります。
 実はすでに色々な現場を知る会社さんと複数の実証実験の準備を進めている最中です。

 

 IoTは”モノのインターネット”なわけですが、モノは分子、Atomから出来ています。
 今日お話ししたような試みは、その”Atom”を”bit”にする、そういう変化を起こすということではないでしょうか。

                                              大津 真人

 

 

 

③ 「IoTを活用した公共交通の変革(ユーザーオリエンテッド目線で)」
 講師:松本 浩之 氏(みなと観光バス株式会社 代表取締役)

fhoto_minato

 

 「IoTを活用した公共交通の変革(ユーザーオリエンテッド目線で)」

 

 平成3年、貸切バス事業者として創業したみなと観光バスは、平成14年に乗り合いバス事業へ参入しました。みなとバスに改名しなかったのは「みな飛ばす」とも読めてしまい、バス会社としてはちょっとどうかと思ったからです。
 現在ドライバーは110名、乗り合いバスと貸し切りバスが70台強、10系統で運行キロ数は197、本社と北区に営業所があります。貸し切りバスは主に結婚式場や病院の定期送迎をしています。
 実はみなと観光バスは公共交通で、世間的にいちばん有名なのは「住吉台くるくるバス」「森北どんぐりバス」「坂バス」「宝塚ランランバス」等、コミュニティバスを成功させたことです。

 

 公共交通事業者というと7割8割は赤字で、行政から交付金や支援金を貰っているというイメージでしょう。しかし、みなと観光バスは行政から一銭も運行補助費をいただいていません。例外は国と宝塚市から依頼された宝塚ランランバスだけです。

 

 1995年の阪神淡路大震災、そして98~99年の貸し切りバス事業の規制緩和の際に、経営はとても厳しくなりました。そこでなんとか新しい商売をしなければならないと考えました。
 コミュニティバスは住民の足を確保するための新しい運行支援です。ところが、コミュニティバスを運行して黒字になった地方自治体はありません。
 規制緩和後、地方自治体から補助金、助成金、交付金を貰わず、鉄道会社の子会社にもならずに複数系統を持っているのは日本で我が社だけです。

 

 昔は行政と公共交通は一体でした。しかし、それがだんだん乖離し、自助努力をしないと公共交通は成り立たなくなりました。したがって市民と企業、行政と公共交通が、新たな交通手段を構築しなければなりません。事業者目線の持続可能な街づくりと、住民主体の新たな移動手段、マイバス意識の醸成、コミュニティバスはそういう発想から生まれました。自分たちの足は自分たちで守る、そうすれば地域も活性化し、沿線の価値の向上にも繋がり、近くの企業にも利益が出るというわけです。

 

 わたしはもともと商社マンで事業予測、マーケティングを担当していました。本格運行までの取り組みでは、住民や行政事業者との合意形成、現行の交通行動の把握とニーズ調査に時間をかけ、その結果を見て、参入を決めたのです。こうすれば乗り合いバス事業は儲かるのではないかという仮設に基づき、実証運行もしました。
 しかし、住民の合意形成には時間がかかります。最初、森北どんぐりバスと住吉台くるくるバスは反対運動が起こりました。
 ちなみに神戸市からは「金は出さないが人は出す」といわれています。行政の役割は許認可関係の整理、既存事業者との利害調整、成功事例を作るための投資、永続的な支援体制です。地域コミュニティが醸成すれば行政負担の減少も期待できます。
 我々は技術革新で公共交通を再構築するという将来像を描いていますが、現状、社会的受容性を図るために時間、資金、労力が必須です。住民参加型は時間がかかり成功率が低く、従来手法では限界があります。
 地域交通を支える新たな取り組み例には、たとえばライドシェアがあります。自家用車で乗客を運ぶ有料サービスで、国内ではUberが有名です。

 

 バス運転者は高齢化が進み、主な働き手は55~59歳。みなと観光バスのドライバーの平均年齢も50歳を超えました。運輸業、運送業は深刻な人手不足に喘いでいます。このままでは現役世代が引退した後、深刻な労働力不足に陥るでしょう。
 トラック業界で必要とされるドライバー数は2020年に103万人、2030年には96万人と予想されますが、就業者数(供給量)は2020年に92万人、2030年に87万人です。  
 大型車に従事するトラックドライバーはとくに減少が深刻で、慢性的に人材不足です。大型は夜間に走りますが、今の若い人は9時-5時を希望し、早朝夜間の仕事は嫌がります。つまり2020年には11万人、2030年には9万人の不足が顕在化するわけです。

 

 弊社のデジタルタコグラフは、システム開発責任者の亀谷と本多がゼロから作りました。円形のチャート紙をタコメーターにセットして針で記録していたものを、デジタルデータ化してデータカード等に記録する装置を作ったのです。
 ユーザーオリエンテッドをモットーに、他社では出来ないことをしようと頑張った結果、汎用インターフェース、変換回路、ジャイロ等、各種データを含め、0.5秒単位でログ情報を出すことに成功しました。日本全国の失敗例を克服し、行動分析データを瞬時に収集し、短時間に交通行動の利用実態調査が可能となり、小規模会社でも実行力のある成果が期待できるシステムです。これにより運転手操作不要で運行状態を管理することもできます。
 この独自アルゴリズムを、パルス整合器なしで完成させ、パルス信号のアナログデータをデジタルデータに変換する仕組みや、バス全体の運行管理に関しても特許を取りました。1台15万円、1000円サーバーで運行、配車、ドライバーの健康管理が乗務中であっても可能です。また、カセットデッキと同じサイズを目指して、3DINサイズを1DINサイズとして実装できるように実現しました。

 

 奈良先端化学技術大学とも連携して、顧客の安全、快適性、運転手の健康、環境等に配慮した運行を行うため、各種データ収集する装置を技術開発、そのための研究をしています。
 また、大阪電気通信大学の上善恒雄教授とは、「走行車両からのセンサーデータを収集、処理するための階層化クラウドとその応用に関する研究開発」をSCOOP事業で一緒にやらせていただきました。走行中のあらゆる車両の運行状況がリアルタイムに把握できれば、交通の安全性が飛躍的に向上します。れは社会的価値が極めて高いものです。

 

 去年、軽井沢でバスの転落事故がありました。あれはドライバーの居眠りが原因ということになっていますが、整備不良の可能性も出てきています。
 パルス整合器で全部データが取れていたら、原因は明確でした。人間は二酸化炭素濃度が高くなると寝てしまいます。今はうつらうつらしていたらセンサーがピピピと鳴る仕組みですが、でもそれでは遅いですよね。寝る前に察知して、ドライバーに知らせなければなりません。

 

 弊社デジタコは、車軸回転数、ブレーキ、ハンドル、ウィンカー、すべてのデータを取得出来ます。また、盗難防止センサーの他、冷凍車には温度センサーをつけ、開閉のときに0.5秒単位で閲覧できる仕組みを作りました。これまで運行履歴はメモリーカードをPCに差すことで確認していましたが、弊社デジタコなら運行中も見られます。また、加減速でポイントを出し、指導に役立てることも可能です。上手いドライバーはポイントがまったくつきません。

 

 弊社は路線バスの事業がほとんどなので、ダイヤ通りの運行が使命です。終了後に車両情報を可視化して運行評価に運用しています。
Random Forestで自動状態を分類し、このデジタルタコグラフが入っているだけで、運転手が何をしているかわかるようにしました。2路線で約6万レコード、実験結果としては今年一年で正解率は97%でした。ただ、弊社の取得情報が正確なため、オープンにすると中小の運送会社は困ることになるでしょうね。

 

 総務省との連携では、ドップラーセンサーをシートの後ろに置き、ドライバーの呼吸と心拍を取り、Wi-SUNを使ってデジタコへ送り、通信するという実証をしました。この仕組みは非接触型のセンサーを活用することで、ドライバーの負担軽減につながり、異常があれば運行管理者に伝えることができます。

 

 また、事故の検証はもちろん、そもそも事故を防げるのではないでしょうか。我々はそのような運転支援、健康支援システムを作っています。接触型だと100人中5~10人が嫌がるので、非接触での製品化を目指しています。しかし、その前にドライバーや労働組合と合意形成しなければなりません。

 

 11月上旬からは群馬大学の自動走行車両アルファードが、つくしが丘自治会と一緒に実証を行います。現在の自動走行は残念ながらスムーズではありません。しかし、こうしたデータ解析をすれば、快適な自動走行、自動運転が可能になるのです。ただ、完全自動運転はAIが人間の知能を超すようなシンギュラリティでもない限り難しいでしょう。

 

 来年度リリースするGTFSリアルタイムは、遅延情報をグーグルに埋め込み、マップを見るだけでバスが何分遅れているか知ることができるシステムです。スマホやPCで路線を選べば、すぐにバスの位置情報が出てきます。
 弊社はこのようなビッグデータ解析とWi-Fi の技術を持っていて、乗客がスマホやアンドロイド端末を持っていれば、アプリケーションをDLしなくても、乗降データを取得できます。個人情報の問題があるので、データの保存は一週間だけですが、今後オープンデータ化し、具体的に街づくりを進めていきたいと思います。

松本 浩之

 

 

 

④ 「IoT・AIビジネスの法務・知財面からの留意点」
講師:柿沼 太一 氏(ATORIA法律事務所 弁護士)

Fhoto_STORIA

 

「IoT・AIビジネスの法務・知財面からの留意点」

 

 AIに明確な定義はありませんが「人間の知的活動の一部を代替するもの」だといえば、おそらく間違いはないでしょう。医療、投資アドバイス、キャラクター生成、工場の操業用ロボット、バスの自動運転など、AIの応用分野は多岐に渡ります。これらAIに関する法務や知財面について、さまざまな相談を受けますが、実際にどういうことが問題となるのか、本日は具体的な例を紹介しながらお話ししていきます。

 

 AIの実態は学習済みモデルというプログラムの一種です。AIのフェーズは生成と保護、活用と法的責任、大きく分けて四つあり、相談はだいたいこの四つに分類されます。

 

 たとえば現在AI活用がかなり進んでいる領域に、画像認識分野がありますが、これは画像を自動的に認識するものです。ある画像を読み込むと、それが何なのかを判断してくれます。学習を進めるほど、画像を正しく認識する精度が向上していく仕組みです。

 

 また、最近話題になっているMakeGirls.moe(http://make.girls.moe/#/)は、ボタンを押せば自動的に萌えキャラが生成されるAIサービスです。同じパラメータでも生成指示をするたびに違うキャラが生成されます。このAIを作るには、大量の萌え画像を読み込まなければなりません。
 実はこのサービスを見つけたとき、とても嬉しかったのですが、それは、このサービスにAIに関する法的な問題がほぼすべて詰まっていたからです。
 仮にこのAI生成に際して無許諾で生データを使っている場合、勝手にそんなことをしていいのでしょうか。そして、作ったAIは誰のものなのでしょうか。また、萌え画像の権利は誰が持っているのか。ボタンを押してキャラを生成した人間なのか、元のモデルを作った人間なのか。また、生成された萌え画像がもともとのキャラに似ていた場合、それはコピーなのかそうでないのか。著作権侵害にならないのか。

 

 またこんな例も考えられます。
 サザエさん風キャラ生成用AIを作成するために、すべての漫画作品をデータとして用いました。完成した AIをWEBサービスとして公開し、利用者がキャラ作成の指示をしたところ、偶然「アナゴさん」に酷似したキャラクターが生成されてしまいました。この場合、アナゴさんをコピーしたことになるのでしょうか。また、これを提供している事業者はなんらかの責任を負うのでしょうか。

 

 著作権侵害には実はふたつの要件が必要です。「同一性(類似性)」と「依拠性」です。
 既存のキャラに偶然似てしまった場合、それだけでは著作権侵害になりません。依拠性がないからです。
 たとえば10年前に見たことがあるが、見たことを忘れていたキャラと似たキャラを作ってしまった場合、現在の通説に従うと依拠性があると判断され、著作権侵害とみなされます。
 では、学習済みモデルのなかに生成の際に用いた画像の痕跡が全く残っていないにも関わらず、似たキャラが出力されてしまった場合はどうでしょう。それは著作権侵害ということになるのでしょうか。
 これも、現在の通説に従うと依拠性があると判断され、著作権侵害とみなされますが本当にそれで良いのか、個人的には疑問があります。

 

 AI生成の際に、他人が権利を持っている著作物を利用できるか、という問題については日本の著作権法に重要な条文があります。著作権法47条の7という条文です。これは日本にしかない条文で、絵でも音楽でもテキストでも原則として権利者の許諾なく利用してAIを作ってもいいという法律です。
 たとえば手塚治虫風キャラを作るAIを作りたい場合、その過程で当然、大量のキャラクターをコピーし、読み込まなければなりません。そのことによって手塚治虫風漫画とはなにかをAIが学んでいくわけです。そのような利用行為は複製行為なので著作権法上は原則として出来ませんが、AIを作る目的であれば、47条の7により利用が可能になるのです。
 著作権法平成21年改正により出来た47条の7は、もともとAI生成のために改正された条文ではなく、ウェブ上の情報解析などのために作られたものでした。同じような情報解析に関する条文は欧州、イギリス、ドイツなど各国にありますが、47条の7のように営利・非営利問わず情報解析のための著作物の利用が許容される規定は日本にしかありません。

 

 著作物とは人間が創造したもので、基本的に創作者が著作権を持ちます。また、人間が道具を使って制作したものも含まれるので、例えばデジカメを使って写真撮影をした場合、当該写真の著作権を持つのは撮影者です。
 ではAIが作成したものはどうでしょうか。AIが道具だとすれば、AIを利用して生成行為を行った人が創作的行為を行っていますので、その人が権利を持つ著作物といえますが、パラメータを選んでボタンを押すだけの行為だった場合、それが果たして人間の創作的行為といえるのでしょうか。
 パラメータの選択範囲が広ければ創作性は高くなり、押した人間に権利が発生する可能性も大きくなりますが、パラメータの選択の余地がなく、ボタンを押すだけのシステムならどうでしょう。

 

 また、こんな事例を考えてみましょう。
 ロボット操業用のAIを生成し、ロボットに組み込み、ある工場に納品したところ、担当役員によりモデルごと持ち出されてしまいました。それは他社に持ち込まれ、同じモデルを組み込んだロボットが販売されました。この場合、AIを生成した事業者はその会社に文句をいえるのでしょうか。
 仮にAIが特許権や著作権のような知的財産権で保護されているのであれば、当該事業者はもちろん損害賠償請求や差し止めができます。
 しかし、AIの正体である学習済みモデルは、一般的に「プログラム+パラメータ」という構造を持っています。パラメータの部分は単なる大量の数字列なので、パラメータの部分に限って言えば、知的財産権としては保護できない可能性が高いと思われます。

 

 医療用AIの場合も、データ提供者は医療機関であることが通常で、AIベンチャーや事業者がそれを利用してAIを生成します。たとえば、たくさんの病変画像とそうでない画像を大量に読み込ませて、病変を認識できるAIを作るのです。
 生成されたAIは、データを提供した医療機関か、あるいはモデルを作り上げたAIベンチャーか、果たして誰のものなのでしょうか。結局は契約で決めるしかないのですが、どこを落としどころにするかを、各プレーヤーが試行錯誤しているのが現状です。

 

 AIの活用に関しても同じです。ある会社が、過去の金市場の値動きや、相場に影響を及ぼす可能性のあるデータを元に、金相場を予測する高精度の投資アドバイス用AIを開発しました。利用契約を締結した会員のみが、クラウド上でアドバイスを受けられるサービスです。すると、しばらくして同種のサービスを提供する競合サイトが現れました。競合サービスはその会社のAIによる出力を入手して使っているようです。さて、どうすればいいでしょうか。そんな相談も受けましたが、これを知的財産制度で保護するのはとても困難です。

 

 また、AIを使ってなにか事故が起こってしまったときの責任はどうなるのでしょうか。医療用AIは、レントゲンやCT画像、MRIの画像を読み込んで、ガンがある場所や病変を自動的に識別するものです。たとえば、医師が利用した診察AIで診断ミスがあり、それに従って治療を施した結果、重い後遺症が残ってしまった場合、AIがガンを見落とし、発見された際、すでに手遅れ状態だった場合、このとき、医師やAIのメーカーは法的責任を負うのでしょうか。まだ答えは出ていませんが、これは本当にシビアな問題です。

柿沼 太一